兄が強盗殺人を犯して刑務所に入り、残された弟はいばらの道を歩かされる。つらくて重い重い話です。苦労続きの弟にようやくの光が射してくるたび「きっとまただめなんだろう」と読み進むのがつらかったです。後半、社長さんが直貴に言って聞かせた言葉に目からうろこでした。東野さんが伝えたかったことの一つでしょうか。その考え方はとてもわかりやすく、まっすぐに入ってきました。けれど......正論かもしれないし、もしくは直貴を強くさせるための言葉だったのかもしれない、でも、あまりに酷でした。うちのめされた直貴によくぞここまで、と。でも直貴のことを真剣に思った心からの言葉と言えるのかも。 「俺はもう見切りをつけた」「見切りって?」「俺自身の人生に、だ。俺はもう一生表舞台には立てない。」若くしてこんな言葉を口にしなければならない直貴に胸が詰まりました。でも直貴は自棄にならず、行く手を阻まれても阻まれても淡々と進んでいきます。
一つの事件が起きて、加害者と被害者がいて、そしてその家族がいて、連なる人たちがいて。波紋はとどまらないです。いじわる、と思える人たちでさえ、その事件がなければそういう行動に出ないわけだから。